銀行を装う電話から始まる不正送金|法人の被害は年間約45億円

「銀行を名乗る電話がかかってきた」——ここから始まる不正送金の被害が続いています。ボイスフィッシング(ビッシング)と呼ばれる手口です。

被害額の4割が、この手口

警察庁が2026年3月に公表した資料によると、令和7年(2025年)のインターネットバンキングに係る不正送金の被害は、全体で4,747件・約103億9,700万円でした。

このうち、法人のインターネットバンキングを狙ったボイスフィッシングによる被害は143件・約45億円です。件数では全体の1割にも満たないにもかかわらず、被害額では約4割を占めています。

単純に割れば、1件あたり3,000万円を超える計算になります。件数が少ないから他人事、という数字ではありません。

手口の流れ

大まかにはこう進みます。

  1. 銀行や金融関連団体を名乗る電話がかかってくる(自動音声のこともあります)
  2. 「システムの更新手続きが必要」などの口実で、担当者に転送される
  3. 会話の中でメールアドレスを聞き出される
  4. SMSやメールで「手続き用のURL」が送られ、偽サイトへ誘導される
  5. IDやパスワード、ワンタイムパスワードまで入力させられる

さらに近年は、遠隔操作ソフトをインストールさせてPCそのものを操作する手口も報告されています。この段階まで進むと、担当者が目の前で見ている画面の裏側で送金が実行されることになります。

電話で会話しながら誘導されるため、メールのフィルターやURLの評価といった技術的な対策をすり抜けてしまうのが、この手口の性質です。

なぜ中小企業が狙われるのか

理由は単純です。電話を受ける担当者が少なく、「これは本物か」とその場で相談できる相手が社内にいないことが多いためです。加えて、法人口座は個人口座より送金の限度額が大きい。攻撃者から見れば、手間に対する見返りが大きい標的になります。

対策は「知っていること」が半分

この手口は、知ってさえいれば防げる性質のものです。そのうえで、次の4点を社内ルールにしてください。

1. 銀行を名乗る電話は、一度切る

そして、通帳やキャッシュカード、銀行の公式サイトに記載されている番号へ、自分から掛け直す。 相手が伝えてきた番号は使いません。本物の銀行であれば、掛け直しを断ることはありません。

2. インターネットバンキングには、公式サイトやアプリからアクセスする

メールやSMSのリンクからは開かない。ブックマークか、アプリからのみ。これを徹底するだけで、偽サイトに入力する経路が塞がれます。

3. 遠隔操作ソフトの導入を求められたら、その時点で疑う

銀行が顧客のPCに遠隔操作ソフトを入れさせることは、通常ありません。

4. 送金の限度額と承認体制を見直す

1人の担当者だけで高額の送金が完了しないよう、複数人での承認を設定できないか、取引銀行に相談してください。技術ではなく業務の設計で被害額を抑える方法です。

訓練より先に、手口の共有を

高度な対策を導入する前に、経理・総務の担当者全員がこの手口を知っている状態を作ることが先決です。全国銀行協会や各金融機関も注意喚起を出していますので、朝礼や社内メールで共有するだけでも効果があります。

当社では、こうした社内ルールの整備と、従業員向けの教育・訓練を含めた形での支援を行っています。

出典

  • 警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年3月公表)
  • 一般社団法人全国銀行協会「法人口座を狙うボイスフィッシングにご注意!」

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