BCCに入れるはずが「TO」に|メール誤送信は仕組みで止める

情報漏えいと聞くと、外部からの攻撃を思い浮かべる方が多いと思います。しかし実際には、日常業務のメール1通で起きる漏えいが後を絶ちません。

台風の注意喚起メールで起きたこと

2026年6月、静岡県の磐田市立総合病院が、患者32名の氏名とメールアドレスが漏えいしたことを公表しました。

経緯はこうです。同年6月2日の午後4時19分頃、職員が、翌日に台風6号が接近する見込みであることから、特定の診療科を翌日受診予定の患者32名に対して注意喚起のメールを一斉送信しました。その際、本来は宛先を「BCC」に設定すべきところ、誤って「TO」のまま送信したため、受信した患者の間で、互いの氏名とメールアドレスが閲覧できる状態になりました。

翌6月3日、メールを受け取った患者から連絡を受けた保健所の指摘により、誤送信が判明しています。

攻撃されたわけでも、システムに侵入されたわけでもありません。患者を気遣って送った1通のメールが、そのまま漏えいになりました。

注目すべきは、再発防止策の中身

この事案で最も参考になるのは、病院が講じた再発防止策です。

同院は、宛先を「TO」や「CC」に設定した場合であっても、すべて自動的に「BCC」で送信される仕組みに変更したうえで、全職員に対して個人情報の取り扱いとメール送信時の確認手順を改めて周知したと公表しています。

つまり、注意喚起だけで終わらせず、人が間違えても事故にならない仕組みを先に入れた。ここが本質です。

メールの誤送信は、能力や真面目さの問題ではありません。誰でも起こします。「気をつけます」で終わらせた組織は、いずれ同じことを繰り返します。

中小企業が今日から見直せる4点

1. 外部への一斉送信は、そもそもメールソフトでやらない

宛先が数十件を超えるなら、メール配信サービスを使うのが確実です。TO/BCCの選択という危険な操作自体がなくなります。

2. アドレスの自動補完(オートコンプリート)を抑制する

「たなか」と入力したら別の田中さんが選ばれていた、という事故は非常に多いパターンです。宛先の候補が自動で出てくる機能は、便利さと引き換えに事故の入り口にもなります。

3. 送信保留の設定を入れる

送信ボタンを押してから実際に送信されるまで、1分程度の猶予を持たせる設定です。「あっ」と気づいてから取り消せる時間を作るだけで、防げる事故があります。

4. 添付ファイルは「ドキュメント検査」で確認する

WordやExcelのファイルには、画面に表示されていない情報(作成者名、コメント、非表示の行やシート、変更履歴)が残っていることがあります。送信前に、[ファイル]→[情報]→[問題のチェック]→[ドキュメント検査]で確認する習慣をつけてください。見えていないものは、確認したつもりになりやすい箇所です。

自社では気づけない

この事案でもう一つ重要なのは、発覚のきっかけが受信者からの指摘だったという点です。誤送信は、送った側からは正常に送信できたようにしか見えません。

だからこそ、事後に気づく仕組みではなく、事前に止める仕組みが要ります。当社では、こうした運用ルールの策定と、実際に守られる形での定着まで支援しています。

出典

  • 磐田市立総合病院「メール誤送信による個人情報漏えいについてのお詫びとご報告」(令和8年6月11日)

← お知らせ一覧へ